深夜前の出来事

『何でこんなことにならなきゃいけないんだ・・・』
タケシは信じられない一夜を過ごし朝日が昇るのを待ちながらそうつぶやいた。
メロンパンを握り締めたタケシの回りには、目を血走らせた数十人の男女が取り囲み今にも襲い掛からんばかりの状態だった。
タケシは回りを牽制するように見回した。
そしておもむろにメロンパンを空高く持ち上げると、大声で叫んだ。
『僕はただメロンパンが欲しかっただけなんだ!!』
どうしてタケシがこんな状況に陥ってしまったかは、話を数時間戻さなくてはいけない。
深夜0時になる数分前、タケシは自分のアパートにいた。
一人暮らしのフリーターのタケシは、給料日の前日で金欠状態だった。
そして空腹状態でもあった。夕食も我慢するしかなかった。
なぜならば、冷蔵庫には食い物らしきものの姿はなかたからだ。タケシはなんとか翌日までやり過ごすつもりでいたのだった。
しかし、もはや限界のときが来ていた。朝まではとても待てない。
とにかく何か口に入れたい。
部屋中を探しまわったものの何も出てこなかった。
せめて小麦粉でもあればとも思ったが、まったく何もなかった。
それは当然のことだった。
何しろ金欠状態は既に5日目に入っていてのだった。
そして家中にある食べられそうなものはすべてて食べつくしていた。
最後の食事となったのが昼に食べた賞味期限が1年前に切れていた棚の奥で発見したコーンの缶詰だったのだ。
という訳で、探して出てくるわけがないのだった。
しかし、神はタケシを見捨ててはいなかった。
なんと食べ物ではないがそれに変わる、それ以上のものを発見した。
それは、お金だった。タケシしばらく見なかったその姿に感涙した。
そして、丁寧になでるようにその姿を見つめ、ゆっくりとテーブルの上に並べ始めた。
そこにはなんと12枚の硬貨が並んでいた。
タケシはまるでその12枚の硬貨をキリストの周りに集まった12使徒のように温かい目で見つめていた。
2枚の50円玉と2枚の10円と2枚の5円玉と6枚の1円玉を見つめるタケシの脳裏には、いくつもの食べ物が走馬灯のように現れては消えていっていた。
しかし、136円で買えるものはそんなにはなかった。
そんなときタケシの脳裏に輝きを増した食べ物が浮かんだ。
それはコンビニに売っているメロンパンの神々しいまでの姿だった。
タケシの心は決まっていた。
目指すは136円のメロンパン。
もはやタケシの心はメロンパンにあった。
そばにあった薄緑のジャージを羽織り大切な12使徒を引き連れてアパートを出たタケシは、数分の距離にあるコンビニへと足を向けた。
時間は深夜0時に後数分という頃だった。

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